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浮気相手に対する慰謝料請求

2008年06月01日 その他

「夫が浮気をしていることがわかり、浮気の相手が誰かもわかった。浮気相手に対して慰謝料請求をしたいが認められるでしょうか。」という相談を受けることがあります。
そこで、今回は、浮気相手に対する慰謝料請求についての話です。


慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償を意味します。
夫や妻(以下では、「配偶者」といいます。)が浮気をしていたのを知ったとき、自分は浮気によって精神的苦痛を受けたのだから、浮気相手に慰謝料を支払ってもらえるのは当然だと考えるでしょう。
浮気相手に対して慰謝料請求をすることは可能ですし、浮気相手に対する慰謝料請求を認めるのが判例の大勢ですが、場合によっては浮気相手から「支払う必要はない。」という反論をされることもあるでしょう。
それでは,浮気相手に慰謝料請求をしたときに、浮気相手からはどんな反論が考えられるのでしょうか。


まず、考えられそうなのは、「すでに夫婦関係が破綻していたので、慰謝料請求をしている人の権利や利益は何ら侵害をしていない。
したがって、自分には責任はない。」という反論です。
浮気相手は、夫婦関係が破綻しているかどうかを正確に知ることはできないでしょうが、「浮気をするような状態であれば夫婦関係は破綻していたはず」と考えて、このような反論をしてきそうです。
こうした反論は裁判では認められるのでしょうか。
夫婦関係がうまくいっていなかったとしても、それのみで直ちに浮気が正当化されるわけではありません。
しかし、平成8年の最高裁判所の判決では、夫婦関係が破綻していたときには浮気相手に対する慰謝料請求は認められないとされました。
もっとも、夫婦関係が破綻しているかどうかは、浮気をした配偶者の言い分だけで認められるわけではなく、婚姻生活をめぐるさまざまな事情に基づいて判断されることになりますので、実際の裁判では夫婦関係が破綻しているかどうかの認定が争点のひとつになるでしょう。
そして、浮気相手の主張にもかかわらず、裁判所が「夫婦関係は破綻していなかった。
浮気によって破綻した。
したがって、浮気の相手にも法律的な責任がある。」という判断をすることもあり得ます。

次に、考えられそうな反論は、自分は浮気をしようと思わなかったが、配偶者に強引に誘われて関係を持つようになったというような反論です。
結果としては、誘いに応じて浮気相手になっているのですから言い訳としては通用しないような気がします。
しかし、たとえば浮気相手が夫の職場の部下だったような場合には、上司に逆らうと職場でひどい目にあうと考えて誘いにやむをえず応じるということもあるかもしれません。
実際の裁判例としては、浮気相手を呼び出して暴行脅迫を加えて関係をもっていたような事例で浮気相手の責任が否定されたものがあります。

さらに、配偶者の浮気については、浮気相手に対して慰謝料請求ができるだけではなく、当然のことながら浮気をした配偶者自身に対しても慰謝料請求をすることができます。
しかし、慰謝料を支払ってもらう相手が二人(浮気相手と浮気をした配偶者)いるからといって、本来支払ってもらえる金額の2倍の慰謝料をもらえるわけではありません。

配偶者と浮気相手の慰謝料支払債務は2人が連帯をして支払うべき債務とされており、慰謝料として支払を受けられる金額が仮に100万円だとすると、配偶者と浮気相手の2人のどちらから100万円の支払を受けると、他からの支払は受けられなくなります。
浮気の問題が発覚したようなときは、同時に離婚も問題になることが多く、離婚にあたっては配偶者から相応の慰謝料の支払を受けることも多いでしょう。
その場合に、精神的苦痛を償うに足りる慰謝料の支払を受けていると、浮気相手に対する請求は認められないことも考えられます。

さて、浮気相手に慰謝料が請求できるとして、いくらぐらいの慰謝料を支払ってもらえるのでしょうか。
実際の裁判で慰謝料の金額を決めるにあたっては、相手方の資力、婚姻期間の長短、浮気相手の関与の程度(積極的に浮気をするように誘ったのか)、浮気をしていた期間などのさまざまな事情によって決まってきます。
そこで、こうした事情のいかんによって金額はかなり変わってきます。
いくつかの裁判例を調べてみると、100万円、120万円、150万円という例が見られるので、100万円ないし150万円の慰謝料の支払が認められることが多いようです(当然のことですが、具体的な事情に応じて、これよりも低い金額しか認められないこともありますし、より多額の金額が認められることもあります)。

相談を受けていると、夫婦の離婚も問題になっているのに、まず浮気相手に対する慰謝料請求をして欲しいという話をされることがあります。
しかし、今後の人生にとってより大きな問題は、浮気相手に対する慰謝料請求でわずかな慰謝料の支払を受けることより、離婚をめぐる諸問題を解決することでしょう。

浮気相手に対する慰謝料は、浮気相手が誰かを知ったときから3年間は請求できますので、離婚の問題を片付けてから浮気相手に対する請求について考えても良いでしょう。

                               以上

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