弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

養子の成立と離縁

2008年04月01日 その他

養子縁組は、血のつながりがない者との間に、親子関係を生じさせるための法律上の制度です。
日本の法制上は比較的緩やかに養子縁組を認めており、当事者間に養子縁組をする意思があることのほか、養親となる者が成年者であること、養子が自分よりも年長でないこと等の要件を満たせば養子縁組が認められます。
この点、フランスでは15歳以上、スイスでは16歳以上の養親子間の歳の差が要求され、また、ロシアやイギリスでは養子は未成年者(18歳未満)でなければならないとされており、こうして比べると日本法は要件が緩やかと言えるでしょう。

養子縁組がなされる例としては、女性しか子供のいない家庭で後継ぎとして男性を欲する場合に、夫が結婚と同時に妻の親と養子縁組をする場合(いわゆる婿養子)や、前婚で子供を持つ人が再婚後に再婚相手とその連れ子との間で養子縁組をする場合が多いと言えるでしょう。
このような場合には、養親子間の年齢差は実親子間の年齢差とさほど変わらないと思います。

しかし、養親が1日でも養子より早く生まれていれば、その養子は「自分より年長ではない」ことになり、他の要件を満たせば養子縁組は可能となり、「同い年の親子」も成立させることができます。この点は、血のつながりのある「親子」とはずいぶん異なります。
このような法制度の下では、いわゆる「面会養子」などという養子縁組も可能となります。
面会養子とは、一定の親族関係にある者でなければ受刑者と刑務所で面会できない場合に、面会する資格を得るために養子縁組をするもので、暴力団の親分と子分との間等でなされる場合があるようです。
その他にも、相続税を節税するための「節税養子」などという縁組もかつてなされていたことがありました。
これは何人も養子とすることで法定相続人を増やし、相続税算定の際の控除額を増やそうとすることを目的とするために行うものでした(相続税法の改正により現在ではそのような控除は制限され、現在はそのような養子縁組は減っていると思われます)。

このように、養子縁組はさまざまな目的でなされ、比較的緩やかな要件を充足することで縁組は成立します。
しかしながら、ひとたび養子縁組が成立すれば、当事者双方に縁組を解消する意思がなければ、容易に縁組を解消することはできません。
当事者の一方しか離縁を望んでいない場合には、民法は、①他の一方から悪意で遺棄されたとき、②他の一方の生死が3年以上明らかでないとき、③その他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき、に限り離縁ができる旨を定めており、それらの事由があるかどうかは、裁判所によって判断されることになります(これを裁判離縁といいます)。


①の悪意の遺棄は、親子の道にもとり相手を棄てて顧みない場合をいいます。
金銭的援助を一方が必要とし、他方が援助をすることは可能なのにもかかわらず援助をしない、というような場合です。
②の3年以上生死が不明とは、単なる音信不通状態では足りず現在まで3年以上継続して生死不明である場合です。

これは、そのような状態にあればもはや養親子関係の実体が失われ破たんしていると考えられるためです。
③の縁組を継続しがたい重大な事由とは、養親子関係を維持または回復するのが極めて困難な場合をいい、現在破たん状態にあることのみならず、将来その破たん状態が回復する見込みもないことが必要になります。
その判断は、当事者間のある一つの行為あるいは事象をとらえてそれだけで判断するのではなく、養親子関係を全体的に観察して総合的に判断されることになります。

もっとも多くなされている婿養子や再婚時の連れ子との養子の場合、夫婦が離婚すると、それに伴い養親子関係も終了(離縁)させることが多いと思われます。
しかしながら、それは養親子双方の合意による離縁をしているのであって、合意がなければ、離縁するには、上記の①②③いずれかの事由が必要となります。
夫婦の婚姻関係終了だけでは、直ちに「縁組を継続し難い重大な事由」があるとは言い難いと思いますので、他の事情を総合的に考慮して離縁させるかどうかを裁判所が判断することになります。

養子縁組をするときには離縁になるなどとは思わないのが普通だと思います。
万が一養親子のいずれかが解消を望むような状況になったときには、他方の合意がなければ上記の要件を満たさなければならず、容易に離縁できない状況になりうるということも十分に考慮すべきと言えるでしょう。

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