弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

名の変更

2007年06月01日 その他

名前をかえたい!

最近、転んで骨折したり、財布を落としたりとどうも災難続きなので、姓名 判断でみてもらったところ、名前の字画が悪いと言われました。もっと縁起 のよい名前に変えることはできるでしょうか。

「名」は、「氏」と相まってその人の同一性を判断する手段として社会生活において重要な意味を持ち、また、自己のアイデンティティーを示すものとして主観的にも重要な意味をもつものですが、出生時に自分の意思で名前を選ぶことはできず、大抵の場合は父母や親族が命名することになります。
 命名者は、生まれてきた子の幸せを思い、あれこれ悩みながら子の名前を選ぶのが通常ですが、時として、その名前が奇妙であったり、近所に同姓同名者がいて郵便物の誤配や人違いが頻繁に生じて紛らわしい等不都合が生じる場合があります。

そこで、正当な事由」がある場合には、家庭裁判所の許可を得て、名前を変更することができるものとされています(戸籍法107条の2)。

判例は、この戸籍法107条の2の趣旨について、

「名は、氏と共に人の同一性を表章する称号たる機能を果たすものであって、その軽々しい変更は一般社会に対し至大なる迷惑を与うるものであるから、これをむやみに変更しないで終始一貫性を保たせ、もって呼称秩序の静的安全を確保することは望ましいことである。また、それと同時に、ある人が特別の必要があって、その名の変更を希望している場合、例えばその名のために社会生活上甚だしい支障があって、その継続を強いることが社会観念上不当であるとか、あるいは営業上の目的からの襲名のごとく、変更後の名を称する方がその人の社会生活上明らかに有利であるとかいうような事情があって、しかもその人が名の変更を希望しているような場合には、なるべくその希望を容れて変更を認めるということは、個人の自由と幸福追求を承認する憲法上の原則からみて、これまた望ましいところである。而して、右二つの法益中何れを重とみ、何れを軽とするか、我が国の法律では、ひとまず前者に重点を置き、後者が前者を犠牲にするに値するほど必要性がある場合には、その変更を認めようとするものと言える。」

としています。

ちなみに、「氏」の変更には「やむを得ない事由」があることが必要とされていますが(戸籍法1071項)、名の変更は氏の変更に比べると社会的影響が小さいため、氏の変更よりも要件を緩和する趣旨で、「正当な事由」と規定されていると解されます。

それでは「正当な事由」はどのような場合に認められるのでしょうか。
珍奇な名前、難解、難読な名前、同姓同名者がいて社会生活上著しく支障がある場合、異性と紛らわしい名前、営業上の目的からする「襲名」の場合、神官、僧侶となった場合などが考えられますが、具体的にいかなる場合に正当な事由がありと認められるかは裁判所の自由な判断に委ねられており、明確な基準というものはありません。

 一般論としては、前掲の判例にあるとおり、名前の変更を認めないとその人の社会生活において著しい支障をきたすような場合であって、呼称秩序の静的安全を犠牲にしても改名を認める必要性がある場合をいい、姓名判断や占いで悪い運勢と言われたから、というようななる個人的趣味、感情だけでは足りないとされています。
 もっとも、通称として長年(最近の例では大体5年程度か。ただし出生間もない幼児の場合はもっと短い期間でも認められた例もあり。)使用しており社会生活上その人を指す名前として周知性があると認められるような場合には、「正当な事由あり」として名前の変更が認められるケースもありますので、まずは、変更を希望する名を職務関係はもちろん一般社会生活において継続的に使用して、実績を積み重ねるというのも一つの方法かと思われます。

正当な事由によって名を変更しようとするときは、名の変更を希望する者の住所を管轄する家庭裁判所にその旨の申立をします。
 申立に必要な書類は、申立書1通、申立人の戸籍謄本1通、その他正当な事情を証明する資料などです。

申立書の「申立の趣旨」欄には、「申立人の名『A』を『B』に変更することを許可する旨の審判を求める。」と記載することになりますので、変更後の名前を決めておく必要があります。

名の変更を許可する審判が確定しただけでは、当然に戸籍上名の変更の効 果が発生するものではありませんので、申立人(届出人)は、審判書謄本を添付して戸籍法107条の2、同法25条により、本人の本籍地又は届出人の所在地の市区町村役場に名の変更届をします(創設的届出)。
 この届出によって戸籍に名の変更の記載がなされることになります。

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