弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

少年事件について

2005年12月01日 その他

 最近は、重大あるいは悪質な少年事件が新聞やマスコミを賑わせ、 少なからず皆さんの関心を寄せているようです。
   家庭法律相談センターでは、離婚や相続などの法律相談を主に承っていますが、本来は、家庭法律相談センターでも「少年事件」専門の相談員を配置したいのです。ただ、少年事件は、弁護士だけの相談で問題が処理できるようなものでもなく、今のところ考慮中です。
  ただし、もし、あなたのお子さんが少年事件で逮捕されたりしたら、迷わず『当番弁護士センター 03-3580-0082」にお電話ください。弁護士が無料でお子さんに会いに行きます。
   今回のコラムは、そんな少年事件にスポットを当ててみました。

 少年事件であろうと、離婚事件であろうと、およそ裁判になるような事件というのは、関係する当事者の間のコミュニケーションの不足が、事件の根本に横たわっているようです。
  この「コミュニケーション不足」という問題を強く意識させた事件として、ある17歳の少年の強姦事件が執筆者にはとても深く記憶に残っています。
    この事件は、父親のない母親と息子という家庭で育った少年が、他の不良グループの少年らと共に、深夜に帰宅途中の女性を襲って強姦してしまったという事件でした。事件自体は、非常に凶悪・陰惨であり、許すことが出来ない卑劣な事件でしたが、少年本人は、家計が苦しいことを鑑みて、自らのアルバイト代を生活費として自発的に母親に渡すなど、母親思いのごくごく普通の少年でした。

   
この事件に対する母親の態度は非常に複雑なものでした。
  事件の性質上、母親は、自らが被害者と同様の「女性」という立場ですから、当然のことながら、自らの子供の犯した事件に対する反応が通常の場合と異なることは予測していましたが、それにしても歯切れの悪い対応に終始していました。
  何回か、母親との面談を繰り返していくうちに、母親は、自らの少女時代に強姦の被害に遭遇していたことを告白されました。母親は、胸の奥深くしまいこみ、今まで誰にも話したことのない苦く、凄惨な思い出であったようです。嗚咽する母親を前にして、執筆者としては何もかける言葉がなかったのが現実でした。

 この事件を振り返ったときに、酷なようですが、母親が自らの体験をそのままではないにしても、形を少し変えて少年に話をしていたら、このような事件は起こらなかったのではないか、という疑問が起きました。
  もちろん子供たちは、大勢の人数で集まると、集団心理からか法律やルールを守ろうという気持ちが希薄になり、犯罪に走りやすいという傾向が指摘されています。ですから、親が被害者としての体験談や注意をしたところで、少年たちの犯罪を完全に防止できるという訳ではありません。
     しかし、他方で、子供たちは「親や兄弟を苦しめることはいけないことである」という本能的なルールを胸に秘めています
  少年犯罪を防止するには、この少年たち・子供たちが胸に秘めているルールを呼び起こすことが必要なのではないでしょうか。

 先ほど述べた事件についても、母親が性犯罪やわいせつ事件で被害を受ける女性がどれだけ重い苦痛を受けるかということを少年に説いていたら、少年は母親のことを思い出し、強姦にまで至らなかったのではないか。
    あるいは、同じ女性の立場として女性が被害者となる犯罪報道に接した際に厳しい意見を母親が少年に告げていたら、そして、被害者 と母親とを同じ女性として重ね合わせるように諭す話をしていたら、あのような事件にまで発展したのだろうかと、今でも疑問が消えません。
  もちろん、例にあげた事件のように「性」の問題があり、それを母親と息子という異性の間で話題とすることはなかなか難しいことだということは理解できます。ですから、例に挙げた事件において、母親に対し息子である少年にかつて母親自身が強姦の被害にあった事実を告白すべきであった、とまで主張するつもりはありません。
  しかし、形を変えて、当事者や内容、時と場所などを変えて、母親と少年との間に性犯罪に関する会話があったならば、異なる結果が生じていた可能性が高かったのではないかと、執筆者は考えています。

 この話は、何も性犯罪に限った話ではないと思います。
  親子の間で、「犯罪」について会話をしていただくことも、実は少年事件の防止につながるものであるということを、ぜひ考えていただきたいと思います。
  その際には、単に「事件を起こすと少年院に入らなければならない」とか、「悪いことをすると、学校を退学させられてしまう」というような事件を起こすと生じる少年本人の不利益の問題だけではなくて、被害者のこと(被害者の立場に立った場合の心情であるとか、少年が被害者の家族であったらどのように感じるか推測させてみる)もし少年本人が罪を犯してしまったときには家族がどれだけ不幸になるのかどれだけ悲しむか、などをよくよく話してあげるべきと思います
  「自分の子供だけは」と信じる気持ちは、どの親御さんにもありますし、親でなければ子供を心底信じてあげられないのもまた真実です。
 しかし、子供を正しい道に導くことも親御さんの責任であり、義務でもあります。
  「犯罪」を話題として親子の間で会話をすることが、非行防止につながることを認識していただきたいと思います。

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