弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

不倫の代償 その②

2005年09月01日 その他

 夫や妻が不倫をしているのではないか、との疑問を持ち、離婚をしたい、或は不倫の相手に慰謝料を請求したい、と当家庭法律相談センターを訪れる方はたくさんいます。
 その際、調停や裁判でも使える証拠を持参される方は、実際には少ないのが実情です。
 調停や裁判では、相手は不倫の事実を否認することが多く、その際相手に有無を言わせない不倫の証拠を突きつけることが必要です。
 ラブホテルの領収書を夫が持っていた、程度では「特定の相手」との不倫の証拠にはなりません。
 又、濃厚な電話の録音、手紙やメールでも、相手が「男女関係」の事実を否認すれば、これだけでは裁判所は勝たせてくれません。
 不倫を裁判所に認めてもらうには、男女関係そのものの事実の記録(写真やビデオ)があれば一番ですが、少なくとも ①夫と相手の女性が ②2人で ③ホテルや個人の住宅に入り ④一定の時間を過ごした証拠が必要です。
 「一定の時間」と言っても、ラブホテル等特殊な場所では数時間でも構いませんが、相手の住居では少なくとも一泊することが必要です。
 裁判で、実際にラブホテルに2人で入るところと、出てくるところの写真を目の前にしても、「中で2人で話をしていただけ。何が悪いのよ」と平然と言ってのける女性もいるくらいですから。

 実際、不倫の証拠を集めるのは、プロである「興信所」に頼むのが確実です。

 家庭法律相談センターでは、興信所に頼みたいが、料金が心配だ、本当に信用できる興信所を教えてほしい、等の相談を良く受けます。
  家庭法律相談センターの相談担当弁護士は、いずれも離婚事件に関しては経験が豊富ですので、信頼の置ける興信所の紹介をしてもらうことも出来ます。
 又興信所への依頼の仕方のアドバイスも受けられます。
 興信所に調査を頼むときは、出来るだけ詳細な情報を興信所に示すことが必要です。

 夫と不倫相手の出来るだけ鮮明な写真、服装や動作の特徴、夫の行動パターン、出来れば夫の手帳のコピー等の資料を集め、勤め先からの退社時刻や不倫の行われる日時も出来るだけ特定することが必要です。

 興信所は、原則的には時間料金で、人員の拘束時間を短く出来れば、料金も少なくて済みます。
 夫に尾行を付けるとしても、退社時間が特定できれば、無駄な待機時間を省けます。
 又、不倫の場所が相手の住居等で予め分かっていれば、そこで待ち伏せれば更に拘束時間は減らせます。
 なお興信所の料金は、成功報酬ではなく、時間料金制のところが多く、実際に指定した日時に不倫が無かったとしても、料金は取られます。
 実際に興信所に頼むときは、調査の内容、例えば調査の開始時刻、終了時刻、終了の事由(ホテルに入るところだけか、出る所も押さえるか、終了予定時刻を超えても調査の必要がある時の延長料金等)、尾行を相手の自宅まで継続するか、等を事前に確認しておくことが必要です。

 これらの点について、料金を含めて、きちんと説明してもらえない興信所には依頼しないほうが良いでしょう。

 このようにして証拠を揃えた上で、夫に対し離婚を求め、あるいは不倫相手に慰謝料を請求することになります。

 弁護士に依頼する場合には、弁護士は先ず内容証明郵便により、相手に対し、依頼者の請求内容を告げ、一定期間内に回答を求め、相手 が交渉に応じない場合には、調停を申し立てるのが普通です。
 相手が交渉に応じ、条件に合意できれば、合意書(和解書)を作成し、離婚届けを提出することとなります。
 場合によっては、公正証書を作成することもあります。
 公正証書は、将来の金銭の分割払い等を約束した場合に、相手が違反したときに、直ちに差押えが出来る書類です。

 しかし相手が、内容証明郵便を受け取っても、交渉に応じないか、交渉には応じても離婚を承諾しないか、慰謝料の金額等条件が折り合えないときは、離婚を求めるには必ず調停を、慰謝料だけの請求をもとめるときは、調停或は直接裁判を起こすこととなります。
 調停は、家庭裁判所で、民間の調停委員2人の立ち会いで相手方と話し合いによる解決を目指す手続きで、相手方が余りにも理不尽な主張をするときは、調停委員がある程度の説得をしてくれるときもあります。
 当然、話し合いによる和解手続ですので、条件面、例えば慰謝料の金額で譲歩して合意することもあります。
 調停手続きは、手続的には柔軟であり、調停委員も間に入って和やかな雰囲気で話し合いによる解決を目指すものなので、必ずしも弁護士に依頼せず、ご自分で申し立て、出頭して手続きを進めることも出来ます。

 調停で話し合いがつかず、又は相手が調停に出席しないときは、裁判を起こすこととなります。
 裁判では、証拠が決め手となって判決がなされますが、裁判官は場合によって、判決よりも、和解を勧めることもあります。
 実際当事者の証言は、不倫の事実を巡って徒に感情的な対立を煽るだけとなることもあり、裁判官は証言―判決よりも、和解を勧める傾向にあります。

10 なお、不倫の慰謝料の金額がいくらぐらいかの質問も良く受けます。
 慰謝料については、様々な要因で、金額が上下します。
  婚姻の破綻の程度、不倫の期間、内容、相手の資力、申立て側の資力、相手の反省の度合い、証拠の確実性等が全て考慮されて、金額が決定されます。
 私の扱った事件でも、数十万円から数百万円まで千差万別です。
 ただ相手には、実際の希望額(合意予定額)よりも多めに請求するのが普通ですので、もし不倫をして、500万円とか1,000万円の請求を受けても、それはあくまで請求額ですので、それほど驚くには値しません。


                                     以 上

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