弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

内縁の不当解消

2017年08月01日 その他

きょうのご質問

 結婚する予定でしたがいまだ籍を入れずに3年間同居中に、彼に浮気をされてしまい、別れることになりました。慰謝料を、誰にどのように請求できますか。

お答え

1内縁の不当解消の検討を婚約の不履行にあたるとして損害賠償請求する方法もありますが、内縁の不当解消の問題として検討していきましょう。判例では、内縁の妻の地位を法律上の妻に準じて保護しています。なお、解消の当不当を問わず、財産分与請求も認められています。

2内縁の定義は同棲より狭いこと

 それでは内縁とは、何でしょう。内縁とは、夫婦としての実態がありながら、婚姻届を提出していない場合をいいます。すなわち、①結婚する意思があり、②夫婦共同生活をしている場合をいいます。結婚する意思がない、単なる「同棲」とは、異なる概念です。ただ、結婚する意思といっても、しょせんは内心の問題。

 そこで、むしろ実際の裁判例の傾向は、同棲していた期間、生活実態等をみて、内縁として保護に値するかを重視していると考えられます。男性側が婚姻届の提出を拒んでいたら、内縁と認められないのでしょうか。そんなはずはありません。実際、内縁と認められた裁判例はあります。共同生活については、期間3年が1つの目安といわれます。しかし、これもあくまで目安。実態で判断されます。結婚式を挙げたか、住民票で同一世帯にしているなど公的な届出の状況、両親や近所にどう関係を話しているか親戚の冠婚葬祭での状況、家計同一か、そこに共同生活の期間などを総合して、内縁に当たるか否かが判断されます。

3内縁関係における貞操保持義務

()内縁夫婦の負う諸義務

 内縁関係と認められることになれば、①扶養・協力・同居義務、②貞操義務、③日常家事債務の連帯責任、④婚姻費用の分担義務等を負います。今回は、ご質問内容に沿って、貞操義務に絞って考えていきましょう。

()貞操義務違反

 内縁の夫婦相互に、貞操保持義務を負うことになります。そこで、内縁の夫が、性交渉レベルの浮気をすれば、貞操保持義務に違反したことになります。調停や裁判などで慰謝料を請求することができます。

()浮気相手による貞操保持請求権の侵害

 浮気相手の女性も、内縁の妻の夫に対する貞操保持請求権を侵害したことになりますから、不貞行為時に故意・過失があれば、女性も不法行為責任を負います。「過失」の存在を請求者側で立証することが必要です。籍を入れていないだけに、故意の立証はもとより過失の立証さえ難しそうですね。

しかし、さじを投げる前に考えてみましょう。ここでは「過失」について。「過失」とは、どのような心理状態をいうのでしょうか。

 不貞行為の当時、自分の性交渉の相手に内縁の妻がいること及び内縁関係がいまだ破綻していないことを認識すべきなのに、漫然とその注意義務に違反し、そう認識しなかったことをいうと考えられます。具体的には、内縁の夫がいつも指輪をしていたし、そういう状況で誘われて、所帯の気配漂う居宅に上がって寝室に入り、あなたと仲良く映る写真立てのある枕元にもいたということなら、過失は認められやすいでしょう。一般の人なら、内縁の妻の存在を認識できるはずですし、特に破たんを窺わせる事情にも接せず、むしろ円満を窺わせる事情に接して、女性は不貞行為に及んでいるからです。「奥さんいるの?」「籍は入れていなくても一緒に暮らしている人はいるのでしょう?」と聞いて当然の状況に接して、浮気相手の女性は目をつぶって性交渉に至ったからです。二人に対して、あなたは精神的損害の慰謝を求め、損害賠償請求をすることができます。

4損害賠償請求した結果

 請求する方法としては,内縁の夫及びその浮気相手に対して,内容証明郵便にて請求をする方法と,裁判で請求する方法とが考えられます。内容証明郵便にて請求をする場合,相手方と金額についての話し合いになることが多いです。この場合には,双方が納得できる金額が着地点になります。

 では,裁判で請求した場合,どのような判決が予想されるのでしょうか。慰謝料額については、内縁期間の長短、内縁解消の理由、精神的苦痛の甚大さ、不貞行為の態様、年齢及び子供の有無・人数、経済力・社会的地位、内縁解消後の生活状況などが考慮されます。そして、内縁の妻に対して負う両者の賠償義務は、いわゆる不真正連帯債務になります。内縁の夫の負担額のほうが浮気相手の負担額より大きいとされます。感情的には浮気相手は憎いでしょうが、よほど女性が主導したような場合でない限り、貞操義務を負う内縁の夫のほうが、負担部分が低額とされがちなのです。そして、その主従の構図が、対外的にも反映される場合があります。すなわち、二階建ての建物にたとえれば、1階部分は両者連帯して債務を負い、さらに2階部分を内縁の夫のみが負う、という判決が出ることがあるのです。

 ただ、これは1つのモデルに過ぎません。内縁、婚姻問わず、慰謝料の不真正連帯債務については、いまだ裁判所によって、処理方式が異なる実情にあります。弁護士に相談して、随時、さまざまな角度から検討してもらうのが解決への近道といえます。

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