弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

養育費をめぐる近時のトピックス

2017年06月01日 離婚

1 適切な養育費は?~養育費の算定方法を巡る動き~

離婚の際、主に未成年の子がいる場合に大きな問題となるのが、養育費の支払いに関する争いです。

養育費について、子を養育する立場からすれば、なるべく多くの養育費を受け取りたいということになりますし、養育費を支払う側からすると自分の生活があるから支払える金額には限りがあるということになります。ですので、養育費の適切な金額ということについて、いつまでたっても解決ができないということが起きかねません。

 そのために、平成15年、東京家庭裁判所、大阪家庭裁判所の裁判官らが中心となって、養育費の算定方法について提案がなされました。養育費の支払いを受ける方(「権利者」といいます)と、養育費を支払う方(「義務者」といいます)の収入と、養育する子の人数や年齢(15歳未満か否か)によって養育費の金額の枠が決まります。

 実務上では「算定表」と呼ばれることが多いこの基準(算定方法)が現在の家庭裁判所の調停等において重要な指針となっており、調停においても養育費について話し合いをするときはお互いの収入に関する資料を出させて、大まかな目安を付けることが多いと思われます。

 このような基準があると、ある程度客観的な養育費についての指針が得られるというメリットがある一方で、特に養育費の支払いを受ける方からすると、算定表が絶対の基準であるかのように考えられて、算定表の基準を上回る養育費の請求が認められづらくなるのではないかという心配も出てくるところです。ただし、裁判所も、個別の事情をまったく加味しないということではなく、事案に応じて、算定表の基準を機械的に当てはめるのが不適切であると判断できるような場合には、算定表の基準を上回る養育費の支払いを命じることもあります。あるいは、額だけで調整するのではなく、個別の事情を考慮して20歳以降も養育費を支払ってもらったり(大学卒業までの養育費の支払いは比較的よく見られます)、ボーナス月には通常よりも多くの養育費を払ってもらったりするなどの解決方法もあります。

 また、そもそも、算定表の基準自体について見直すべきではないかという動きもあり、日本弁護士連合会は平成28年11月15日、「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」を発表し、これまでの基準とは違う算定方法(「新算定表」)を提言しています。

 特に弁護士をつけずに調停に臨まれている方は、調停員から「算定表からすると◯万円になりますから、それ以上は難しいですよ」などと言われると、それだけであきらめてしまいそうになるかもしれませんが、事情によっては算定表を上回る請求が認められる場合もありますから、まずは、専門家に相談してみていただくことをお勧めします。

2 養育費が支払われない?~財産の差押えを巡る動き~

 色々あってやっと養育費の金額が決まっても、その約束が守られなければ意味がありません。しかしながら、現実には、調停で決まったことでも数か月程で支払いが滞るようになるという事例によく遭遇します。

 そのような場合には、もちろん、書面などで任意に支払いを要求したり、(調停で決まったことであれば)履行勧告といって、裁判所から約束したことを守るように勧告してもらったりすることもできますが、奏功しない場合が多いと思われます。また、調停調書に基づいて、相手の財産(預貯金・給与・不動産・車等)を差し押さえるということも考えられますが、口座を変えられたり、転職されたりすると、差押えする対象が分からないということが起きてしまいます。言わば「逃げ得」になってしまうわけです。

 このような「逃げ得」に対して、最近認められるようになった方法として、一部の金融機関においては、弁護士会照会という個々の弁護士が弁護士会を通して照会をかける方法により、預金の有無や、残高等を回答してくれるようになっております(ただし「弁護士会照会」という以上、弁護士しか行うことが出来ません。)。

 また、法務省においても、このような現状を踏まえて、裁判所が主導して、支払い義務がある人の預貯金口座の情報を金融機関に明らかにさせる仕組みを導入することを考えているようです。

 実際にそのような仕組みが導入されるまでには数年かかると思われますが、このように、徐々に「逃げ得」を許さないような仕組みが導入されてきておりますので、養育費の支払いが滞っても、あきらめてはいけません。これも、まずは、専門家に相談してみていただくことをお勧めします。

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