弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

お墓は誰のもの?

2017年04月03日 相続

最近、お墓をめぐる紛争が多いと言います。実際、弁護士の間でもお墓をめぐる紛争について解説した専門書が良く売れています。お墓の所有権は、通常の相続財産とは異なり、遺産分割の対象とはなりません。お墓(墳墓)や仏具、遺骨などは祭祀財産と呼ばれ、祭祀財産について民法は

(祭祀に関する権利の承継)

第八百九十七条  系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

と規定しています。この規定は、祭祀承継者の決定方法について、第1順位「被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主催すべき者」、第2順位「慣習に従って祖先の祭祀を主催すべき者」、第3順位「家庭裁判所が定める」という順序で決するというように解釈されています。第1順位はつまり、お墓を建てた人、管理していた人が「次はお前がお墓を守りなさい」と指定すればそれが一番優先されるということです。したがって、後々揉めないためには遺言で祭祀承継者も指定しておくことが一番です。ちなみに、必ず遺言で指定しなければならないというものではなく、黙示の指定や口頭での指定でもよいのですが、相続人の間で揉める場合には、結局裁判所へ持ち込まれてしまうので、やはり書面で残しておくことが望ましいでしょう。

順位の「慣習」ですが、これもなかなか厄介です。一般的には長男が家を継ぐという日本古来の考え方が依然として残っており、そのことが「慣習」にあたるのではないかと思われそうですよね。相続人全員がそれでいいと言えば、もちろんそれで問題とならないでしょう。しかし、お墓の取り合いになって、結局裁判所に持ち込んで決めてもらおうとした場合に、裁判所は直ちにそうした考え方を取りません。戦前の家父長制を肯定するような考え方になるため、消極的なのでしょう。

ちなみに裁判所の指定(第順位)の判断基準としては、「承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係,承継候補者と祭具等との間の場所的関係,祭具等の取得の目的や管理等の経緯,承継候補者の祭祀主宰の意思や能力,その他一切の事情(例えば利害関係人全員の生活状況及び意見等)を総合して判断すべきであるが,祖先の祭祀は今日もはや義務ではなく,死者に対する慕情,愛情,感謝の気持ちといった心情により行われるものであるから,被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって,被相続人に対し上記のような心情を最も強く持ち,他方,被相続人からみれば,同人が生存していたのであれば,おそらく指定したであろう者をその承継者と定めるのが相当である。」(東京高等裁判所平成18年4月19日決定)とする裁判例があります。

一方、お墓については、奪い合いではなく、押し付け合いもおきているそうです。お墓をめぐって私が受任した事件で、あるお寺の住職にお話を伺った際、お墓の管理者が亡くなった後、相続人と連絡が取れない、管理費を払ってくれないなどといった事例も相当多くなったと聞きました。少子化のためか、お墓の苗字と管理者の苗字が異なっている所も数多くあり、管理料を払いたくないから、無縁仏にという相談もあるそうです。

遺言を残す際は、相続財産だけではなく、祭祀財産にも気配りが必要な時代になったようです。

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