弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

相続関係の法改正

2018年08月31日 相続

1 平成30年7月に相続関係の民法などの改正案などが国会で成立しました。
 相続関係の改正としては,約40年ぶりの大幅な改正となっています。
 主な改正点は以下のとおりです。

2 配偶者の居住権の保護の強化
 配偶者の居住の利益を確保するため、新たに2つの権利が創設されました。
 ひとつは、配偶者が相続開始時に遺産である建物に無償で居住していた場合において、誰が当該建物を取得するか決まっていない場合には遺産分割で当該建物を誰が取得するか決まるまでの間(最低6か月間)、遺言で当該建物を誰が取得するか決まっているなど配偶者が当該建物を取得しないことが決まっている場合には当該建物を取得した者から当該建物の明け渡しを求められてから6か月間は、無償で当該建物に居住する権利(配偶者短期居住権)です。
 もうひとつは、配偶者が相続開始時に遺産である建物に居住していた場合、遺産分割や遺言によって配偶者が終身又は一定期間当該建物を使用することができる権利(配偶者居住権)です。配偶者がこの権利を取得することが可能となります。

3 遺産分割の取扱い

(1)夫婦間の居住用不動産の贈与
 これまでは婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住している建物又はその敷地が贈与された場合でも、原則として遺産の前渡しとして遺産分割の計算に組み入れることになっていましたが、このような配偶者の居住の利益を確保するため、原則として遺産の前渡しとして取り扱うことはしないことになりました。

(2)預貯金の仮払い
 平成28年の最高裁判所の決定によって遺産である預貯金は遺産分割の対象となり、遺産分割が終了するまでは各相続人が単独では払戻ができないことになりましたが、これでは相続人の生活費、被相続人の葬儀費用、被相続人の債務の支払などに必要な場合でも遺産分割が終了するまでは遺産である預貯金を払い戻して使用することができません。
 そこで、これまでかなり厳格な要件でのみ認められてきた家庭裁判所による仮分割の仮処分について、預貯金についてはその要件を緩和するとともに、金額の上限はありますが、口座ごとに預貯金の一定割合(相続開始時の預貯金額の3分の1に法定相続分を乗じた額)については裁判所の手続きを経ることなく各相続人が単独で払い戻しが受けられるようになりました。

(3)遺産分割前に処分された遺産の取扱い
 遺産分割前に遺産が勝手に処分された場合(例えば、共同相続人の一人が勝手に遺産である預貯金の払戻を受けたような場合が典型です)、遺産分割の対象となる財産は遺産分割時のものとされているため、これまでは勝手に処分した相続人も含めて相続人全員の同意がなければ、処分された遺産は遺産分割の対象とならず、遺産を勝手に処分した相続人とその他の相続人との間で不公平な結果となる場合がありました。
 そこで、遺産を処分した相続人以外の相続人の同意で、処分された遺産を遺産分割の対象とすることができることになりました。
   
4 遺言
(1)自筆証書遺言の方式の緩和
 現在自筆証書遺言は財産目録も含めて全文を自書する必要がありますが、これでは遺言をする人の負担が大きい場合もあることから、財産目録については各頁に署名・押印をすることを条件に、パソコンで作成したり、通帳などのコピーを添付することでもいいようになりました。

(2)遺言執行者の権限の明確化
 遺言執行者の行為の効力や権限を明確にしました。

5 遺留分
 現在遺留分減殺請求をすると、遺産について直接権利を取得すると考えられていることから、不動産などでは原則として共有となりますが、共有状態では不動産の利用は困難ですし、共有関係の解消を巡って紛争となることもあります。
 そこで、遺留分減殺請求をした場合、請求の相手方に対して遺留分を侵害した分に相当する金銭の支払いを求められるようになりました。
 これに伴い、遺留分減殺請求の相手方が直ちにこの金銭の支払いができない場合には、裁判所に対してその全部又は一部について支払いの時期を遅らせることを求めることができるようになりました。

6 「相続させる」遺言の効力
 従来「相続させる」という内容の遺言で不動産を取得した者は、判例で登記をしなくてもその不動産を取得したことを第三者に対抗できるとされていましたが、これでは遺言の存在やその内容を知らない第三者の利益を害しますし、遺産分割や遺贈の場合に登記がなければ第三者に対抗できないとされていることとの均衡を失します。
 そこで、「相続させる」という内容の遺言で不動産を取得した場合でも、法定相続分を超える部分については登記がなければ第三者に対抗できないことになりました。

7 相続人以外の者の貢献の考慮
 相続人が無償で被相続人の財産の維持や介護などに尽力した場合、遺産分割に際して寄与分という形でその尽力を考慮することが可能ですが、尽力したのが相続人以外の場合には現在これを考慮する方法はありません。
 そこで、相続人以外の者が無償で被相続人の財産の維持や介護などに尽力した場合、一定の条件の下で、相続人に対して金銭請求ができることになりました。

8 遺言の保管
 新しく法律が制定され、法務局が自筆遺言証書を預かる制度が設けられました。

9 施行時期
 以上の改正などは基本的に平成31年7月13日までの間に政令で指定する日から施行されますが、自筆遺言証書の方式の緩和は平成31年1月13日から、配偶者の居住権の保護の強化と遺言の保管は平成32年7月13日までの間に政令で指定する日から各々施行されます。

                                                      以上
                                 

一覧へ戻る
一覧へ戻る