弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

「離婚の慰謝料 不倫相手には請求できず」ってどういう意味?

2019年04月01日 離婚

 さる平成31年2月19日、最高裁判所の出した判決がニュースになりましたが、なかには上記のような見出しで報じられていました。

 この見出しだけを読むと、「不倫の相手に、慰謝料を請求することが出来ない」という意味に読めてしまうかもしれません。

 しかし、この判決をそのような意味で理解することは、不正確であると言えます。ここでは、そもそも不倫相手に慰謝料を請求することの法的な意味合いからさかのぼって解説してみることにします。

 そもそも婚姻配偶者同士は、法的に婚姻関係に入った以上、その婚姻生活を平穏に過ごしていくことが予定されているといえます。

 判例では、「婚姻共同生活の平和の維持」という言葉を用いて、この平穏な関係を維持していくことが、婚姻配偶者の権利であることを明記しています。

 そのような関係でありながら、一方配偶者が第三者といわゆる不貞関係を結ぶ行為は、他方配偶者が維持していきたい「婚姻共同生活の平和」を壊す行為と言え、他方配偶者の持つ婚姻共同生活の平和の維持という権利を損なわせる行為となります。

 このように、不貞関係を結ぶことが他方配偶者の権利を損なわせる行為だからこそ、法的に「不法行為」と認定され、権利を損なわせたことで損害が生じたとして、不法行為者である一方配偶者及び第三者に慰謝料を請求することができることになります。

 この結論は、上記判決の中でも「不貞行為に及んだ第三者は、」「夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合がある」とされているとおり、全く変わっていません。

 では、題名のような裁判はなぜ下されたのでしょうか。この点、「離婚の慰謝料」という言葉がポイントとなります。

 離婚をする際でも、離婚という不利益を生じさせたことに責任を持つ者がいる場合、例えば一方配偶者の不倫が原因で不仲となり離婚に至った場合などは、他方配偶者は離婚の請求と共に、その離婚を生じさせた責任のある一方配偶者に対し、慰謝料請求することができます。このように、慰謝料の原因が離婚である場合には、「離婚の慰謝料」という言葉が使われます。

 そうすると、もしもその離婚が配偶者同士以外の行為によって生じたとすれば、やはりその責任追求として慰謝料請求が出来るのではないか、とも考えられます。本判決の事例も、配偶者が不貞行為をして、離婚に至った後に、他方の配偶者が、不貞行為の相手方である第三者に、「離婚の慰謝料」を請求した、という事案でした。

 しかし本判決は、題名通り、この請求を認めませんでした。「離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である」という原則が最大の理由とされています。離婚解消を決定するのはそれぞれの夫婦なのであるのだから、この決定に関する責任も、原則として夫婦が負うべき、ということになるのでしょう。

 ただし本判決は、いかなる場合でも第三者に「離婚の慰謝料」を請求できないとまではしておらず、不貞行為の相手方が、「夫婦を離婚させることを意図して」「婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして」「夫婦を離婚のやむなきに至らしめた」ような特別な事情のある場合には請求できるとしています。

 結局、本判決は、不貞行為の相手方である第三者に「離婚の慰謝料」の請求を認めなかったものにすぎないものであって、第三者に対する「不貞行為の慰謝料」の請求は、新しい判断が下されない限り、今後も認められるであろう、ということになります。

 この判決から分かることは、ひとくちに「慰謝料」といっても、何に対しての慰謝料なのかによって、結論が別れてくることがあるということです。ニュースの短い見出しでは、そこまでのことを受け取ることが難しいため、実際の中身とは異なる印象を受けてしまうことがあるのです。

 今回は最近のニュースについて触れましたが、このほかにも、インターネットやメディアなどで流布されている法律関係の情報は、法律の専門家である弁護士から見ると、表面的な理解だけでは内容を見誤ってしまうような情報が多々あると言えます。

 様々なお困りごとについて迷われることがあった場合は、些細なことでも、まずは弁護士に相談してみることをお薦めいたします。

                                           以上


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