弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

別居・調停離婚と子ども

2018年02月01日 離婚

質問

 結婚して10年、2人の子がいます。
 このたび、妻が、子2人を連れて自宅を出ていき、妻の実家に戻りました。
 子供はそれぞれ12歳、10歳になります。昔から、子供2人とも妻のほうになついています。今回も子供たちは納得して妻に付いていったようです。
 妻は、私を相手方として、夫婦関係調整(離婚)調停及び婚姻費用分担請求調停を、家庭裁判所に起こしてきました。妻は、経済力はそれなりにあり、会社の正社員です。日中は妻の両親が学校帰りの子供をみています。このまま別居が続く見通しです。
 私は、妻とは、気が合わず、よりを戻したくありません。自分には関心のある女性がいます。早期に妻との離婚に応じたい考えです。
 しかし、子供は2人とも、手放したくありません。早く会いたいです。確かに、私は会社の正社員ではなく、経済力に富むとは言い難い状況です。それでも、離婚時の親権や監護権は自分が確保できたらよいと思います。学問を修め社会で日々もまれている私です。とくに子供の進学について将来を見据えて決定できるのは自分だという自負を持っています。
 私は今後どのように対応すればよいでしょうか。

回答

1.お子様との交流について

(1)考えられる主な申立て
 お子様との面会交流を求める調停を家裁に申し立てるとよいでしょう。
 また、監護権者指定申立て、子の引渡し申立てを併せて申し立てることも考えられます。
 奥さまから先になされた夫婦関係調整(離婚)調停及び婚姻費用分担請求調停に、あなたの申立てが、併合される運びになるでしょう。

(2)面会交流申立てについて
 面会交流の申立ては、事実上の非監護親たるあなたから、お子様との面会交流を、別居中から求めていくものです。
 奥さまが面会交流に応じた場合には、すると今度はあなたが調停委員から、監護者指定、子の引渡しの両申立てを取り下げるようやんわりと促されるかもしれません。事実上の監護を奥さまが平穏にしている以上、あなたを監護者として子を引き抜くドラスティックな変更を追及するのは、子の利益に必ずしも沿わない。そのように一般的には見られがちだからです。
 このように、調停中に実現を期待できる申立ては、お子様との面会交流のほうです。
 奥さまが面会交流を拒否した場合であっても、調査官調査の後、試行面接の実施とその経過をみて、子の利益上とくに問題ないとされれば、本格的な面会交流へ向けた流れが整います。
 先に申し上げた監護者指定、子の引渡しの両申立てを調停委員の勧めに従って取り下げるか否か、そのタイミングや流れを掴む、そのためにも早くから弁護士に相談して代理人になってもらうべきですし、せめて的確なアドバイスを受けるべきです。

2.離婚時の親権、監護権

(1)判断基準の例:母性優先原則
 あなたの大きな関心事であり、また実際に本件調停で、最も鋭い争いになるのは、離婚時の親権及び監護権の帰属でしょう。
 法律上、離婚の際には、父母のいずれかを子の親権者、監護権者と定めることが必要です。
 ふつうは親権者と監護権者は一致します。たとえば親権は父親、監護権は母親、というように親権と監護権が分属するのは、異例といえるでしょう。
 では、親権・監護権の帰属先の判断基準として、どのような基準があるのでしょうか。子供の意思ももちろん反映されますが、以下の原則が一般に挙げられます。いわゆる継続性の原則、母性優先原則、さらに、兄弟不分離等の原則です。子の利益のために現状変更をしない、母親が優先する、兄弟姉妹を引き離さないという建前です。
あなたのケースでは、奥さまに日頃なつく子供が納得して奥さまに連れられて別居し、奥さまが子供を監護養育しています。奥さまの両親のサポートもあります。奥さまには経済力があります。それに対して、あなたは経済力はさほど豊かではないとのこと。
 すると、離婚時の親権者・監護権者は、奥さまとされる可能性が高い状況です。本件は実際、仮に調停が不調に終わって「離婚訴訟」になれば、子の利益の観点から、監護権者を母とすべきと裁判所が判断する可能性か高い状況です。
 他に特別な事情のある場合ならばともかく、ふつうは、裁判所が親権、監護権ともに奥さまに帰属させる可能性が高いでしょう。
 そこで、当面の調停においても、調停委員は一般的な審判の傾向を踏まえて発言してくると思います。もちろん、あなたが納得できないのに、調停に応ずる必要は全くありません。ただ、利害得失の判断が難しいので、弁護士に代理人として調停に同席してもらうのがよいでしょう。
 なお、上記で述べたことは一般論です。ご質問からは明らかではないのですが、夫婦仲が悪くなった原因も考慮されることはありますし、お子様への虐待やネグレクト(過去のものであっても)、飲酒癖等の事情があれば、結論に影響することもあるのでご注意ください。

(2)面会交流を疎かに考えないこと
 親権と監護権とを「分属」させる合意が調停ではできないケースの方が多いと考えられます。
 その場合でも、単に調停を不調に終わらせるのが得策か、弁護士の意見をよく聞いて下さい。調停では駆け引きの要素があるので、奥様の方が面会交流の条件に関しては譲歩する可能性があります。一方、訴訟になるとそのような有利な条件にはならない可能性があるからです(もちろん、締結見込みだった調停案どおりの訴訟結果になる可能性も十分にあります)。感情に任せて流してむやみに審判に移行しては、損になることもあります。
 弁護士なら、もちろん親権・監護権についてご希望に沿うよう調停で注力しつつ、ご希望内容が調停で実現不能となっても、「面会交流の調停」だけは、一気に交渉を詰め、実現しておくかもしれません。
 訴訟で親権、監護権を勝ち取れないリスクがありますから、子供との盛んな面会交流の条項は命綱なのです。
 監護権を伴わない親権の実質は、進学や病気時の手術等に関する同意権です。
 面会交流で、進路、進学に関する子供の悩みや意向を、無理強いでなく自然な打ち明けとしてあなたが聞くことができるでしょうか。そうであれば「親権者父」という相当稀な裁判結果をもたらす、ささやかな活路となるでしょう。
 面会を重ねるうちに、あなたの特性を子供が理解して、お父さんにぜひとも親権者になってもらいたいという意向に、心境ががらりと変わることがありうるからです。

一覧へ戻る
一覧へ戻る