弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

離婚後の養育費の諸問題について

2019年02月01日 離婚

問 3年前に離婚をしました。離婚当時、元夫との間に1歳になる子がいました。子の親権者かつ監護権者を母である私と定めて離婚し、現在まで私がひとりで子を養育しています。

質問1 

 離婚時の元夫との間の合意では、毎月養育費を受け取ることになっていました。ところが、離婚した半年後に、元夫が私を突然訪ねてきて、私に「養育費を放棄しろ」と詰め寄ってきました。そして、私は今後養育費をいっさい請求しないという放棄合意を、元夫との間でつい、してしまいました。その後この2年半の間、養育費の支払いをまったく受けていません。一度放棄をしてしまった以上、毎月の養育費をあらためて元夫に請求することはもはや無理なのでしょうか。私の経済状況は苦しいです。

質問2 

 離婚時に合意した水準の養育費を再請求できたとして、さらに、今後の双方の事情によっては、より高い水準の養育費を将来的に私が元夫から毎月受け取れるような余地もあるのですか。

質問3

 (1)私が再婚したら、子と元夫との身分関係はどうなるのですか。養育費に変化はありますか。

 (2)私が再婚したら再婚相手と私の子の身分関係はどうなるのですか。養育費に変化はありますか。

回答

ご質問1について

 母が養育費を放棄したら通ってしまうのか、養育費支払義務の「根拠」から一緒に考えてみましょう。養育費支払義務を非監護親が負うのはなぜでしょうか。――子に対する親の扶養義務に基づきます。

 そして、この扶養に関する権利は、処分・放棄することができない性格のものとされています。そうすると、たとえ子の監護者たる母が養育費を放棄すると表明したからといって、父親の子に対する扶養義務が無くなったことになりません。少なくとも子は、独自の立場で、非監護親たる父に対して扶養義務としての扶養料の支払義務の履行を請求できます。具体的には、親権者たるあなたが子を代理して、元夫に扶養料の支払請求をできる筋合いです。

 なお、養育費支払義務の根拠としては、非監護親の監護親(元妻)に対する監護費用の分担を根拠とするという見解もあります。もっとも、その見解に立ったからといって、子に対する親の扶養という性格が排除されるわけではないと考えられます。

 また、お母様ご自身、そもそも元夫に詰め寄られて養育費放棄の意思を表明したようですが、もしも元夫から強迫されたりあなたに錯誤があったりして放棄したのであれば、放棄の無効を主張するなり取消しをするなりして対処する余地もあるところです。ぜひ弁護士に法律相談してください。

ご質問2について

 将来の経済事情等の変更によっては、あなたが養育費の増額を家庭裁判所に申し立てて、認められる余地があります。

 たとえば、元夫に将来キャリアアップの転職などによる収入増があれば、あなたから養育費の「増額」請求が認められる余地があります。先ほど述べた親の子に負う扶養義務は、1切れのパンを分けあう義務と言われます。非監護親の生活水準と同じ水準の子の養育を実現することが求められるから、非監護親の生活水準が向上すれば養育費も増額になる筋合いなのです。 またあなたに収入減があれば、やはり養育費の「増額」を主張できます。

 さらに、子の私立校への進学など特別の事情があれば、養育費の増額請求の認められる余地があるでしょう。とくに、相手方の元夫が私立校への子の進学を予め知っている場合に認められやすいとされます。

ご質問3について

(1) 次に、「自分が再婚したら子と元夫との身分関係や養育費はどうなるのか」というご質問について。

 あなたが再婚しても、元夫と子の身分関係に変動はなく、依然として、父と子の関係です。元夫が死亡すれば、子は相続人ということになります。また生前、父子間では、相互に扶養義務を負います。そこで前述のように、子は、父に対して養育費の支払いを請求できます。

 もっとも、母が働いている男性と再婚して子と一緒に暮らすという場合であれば、一般に以前より経済的に余裕が生じることになります。そこで、元夫が事情変更を理由に養育費の減額調停を申し立ててくることが考えられ、元夫の養育費減額請求が認められる可能性は高いといえます。

(2) さらに、「自分が再婚したら再婚相手と私の子の身分関係や、元夫からの養育費は、どうなるのか」というご質問について。

 あなたの再婚相手と子の間は、法律上は他人同士であって、身分関係を生じることはありません。

 しかし、再婚に伴って新しい夫があなたの連れ子を養子にしたなら、話は別。再婚相手と子は、親子関係に入り、再婚相手に子の扶養義務が生じます。一方、この場合でも、実の父親と子の間の親子関係は切れません。特別養子縁組という特別の制度に依らない限り、実の父と子は依然として親子であり、依然として元夫は子の扶養義務を負うのです。すると子の扶養義務については、実の父、母、養親たる父の三者が義務者であることになります。一般に母親が再婚した場合、子が再婚相手の養子になるか否かにかかわらず元夫の養育費減額請求が認められる可能性は高いのでありますが、子が再婚相手の養子になれば、なおさら元夫からの養育費減額請求は認められると見越されます。

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