弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

2016年12月01日 相続

1 銀行預金が遺産分割の対象となるかについて争われた事件が、最高裁第一小法廷から大法廷に審理の場が移され、平成28年10月19日、大法廷で弁論が行われました。

2 ある人が死亡すると、遺言がない場合、その人(被相続人といいます。)に属していた一切の権利義務(相続財産といいます。)は、被相続人と一定の関係にある人(法定相続人といいます。)に、各相続人の法定相続分に応じて、法律上当然に移転することになります。

そして、相続財産を各相続人の事情を考慮して、各相続人に分けることを遺産分割と言いますが、相続財産のうち、遺産分割の対象となる財産として、不動産、自動車・宝石等の動産、株式等の会社の社員たる地位等を挙げることができます。

ところが、預金、厳密には銀行等の金融機関に対する預金払戻請求権については、最高裁第一小法廷昭和29年4月8日判決以降の多数の判決が、遺産分割の対象にならず、各相続人はその持分に応じて当然に相続するとされてきました。

そこで、理論上は、各相続人はその法定持分に応じて銀行等に預金債権の払戻請求をすることができることになります。

例えば、被相続人である父親の銀行預金が1000万円あって、相続人が兄弟2人だけである例では、兄弟は銀行に対し、それぞれ500万円ずつ支払請求できることになります。

尤も、相続人の1人が生前に贈与を受けているなどの事情があると、最高裁第一小法廷昭和29年4月8日判決等の判例の立場では不公平ではないかとの疑問が残ります。

例えば、上記の例で、弟が500万円の生前贈与を受けていたとすると、兄が500万円を相続し、弟が500万円を相続するとともに、さらに500万円を生前贈与によって得ていることから、合計1000万円を手にする結果になるからです。

尤も、家庭裁判所で行われる調停において、相続人全員の同意の下に預金全部を相続財産として、他の相続財産をも合わせて遺産分割を行い、柔軟妥当な解決を図ってきたと言われています。

また、銀行等の金融機関では、相続人全員の署名と実印・印鑑証明書を添付した書面の作成を要求して、その上で被相続人名義の預金の払い戻しに応ずるという取り扱いがなされてきたと言われています。

しかし、相続人全員が同意しなければ預金全部を相続財産として取り扱うことは不可能であり、また、ある相続人が自己の持分に応じて銀行に対して預金払戻請求訴訟を行うと、今までの判例の立場では銀行は敗訴という結果になるが、そのような例は多数にのぼると言われています。

3 最高裁大法廷で争われている事件は、約4000万円の預金の相続をめぐって、1人の相続人が5000万円を超える生前贈与を受けたため、もう1人の相続人が「生前贈与を考慮せずに法定相続分にしたがって預金を2分の1(2000万円)ずつ分けるのは不公平だ。」と主張して遺産分割の審判を申し立てました。第一審と第二審は、最高裁第一小法廷昭和29年4月8日判決等の判例にしたがって遺産分割の審判申立を退けました。

ところが、本件が最高裁第一小法廷にかかったところ、最高裁第一小法廷から大法廷に審理の場が移ることになりました。

大法廷における審理は、判例変更や違憲判断などの重要な判断を行なう際に開かれるといわれています。

そこで、最高裁第一小法廷昭和29年4月8日判決等について、判例変更が予測されます。

4 以上のことから、来る最高裁大法廷における判断は、調停や銀行での実際の取り扱いに大きな影響を与えるものであることから、注目されている訳です。

以 上

一覧へ戻る
一覧へ戻る