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離婚時の子どもの親権の定めと離婚後の親権変更

2018年06月29日 離婚

(質 問)
 最近、妻とは性格の不一致から折り合いが悪く、離婚を考えています。妻との間に10歳の息子が1人いますが、子どもの将来のことなどを考えると、進学なども十分に支援できる私の方で引取りたいと考えています。父親が子どもの親権をとることはできるのでしょうか。離婚の際、母親が親権者になったとしても、将来、私の方に変更することはできるのでしょうか。

(回 答)
1 離婚と親権者の定め
 離婚には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚がありますが、いずれの場合も子どもの親権者を決める必要があります(協議離婚では、親権者を決めないと届けが受理されません。)。
 この親権ですが、子どもの身の回りの世話や教育など、生活全般の面倒を見る身上監護権と子どもの財産を代りに管理したり、契約などの法律行為を行ったりする財産管理権の二つの権利から構成されており、理論的には父親と母親とで分担することが可能ですが、特に事情がない限り、両方の権利を一人で受け持つのが通常です。

2 親権に争いがある場合の手続き
 親権に争いがあり、話し合いがどうしてもつかない時は、協議離婚の方法によることができず、家庭裁判所に離婚調停の申立をすることになります。日本の制度上、離婚裁判で争う前に、調停の場で話し合いを行うことと定められているからです(調停前置主義)。
 調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをして始まりますが、あくまで話し合いの場ですから、どうしても話し合いがまとまらなければ調停が不成立となり、その後離婚裁判をすることとなります。裁判では、裁判所が最終的に判断しますので、親権についても決着することになります。
 現状では、離婚調停や離婚裁判において親権を得るのは母親の方が8割以上になるともいわれており、父親が親権を得るのは容易ではありませんが、一定の事項を押さえて進めれば父親にも可能性があります。

3 親権者を決定する場合の判断基準
 親権者を決定する場合の判断基準は、おおまかにいうと、どちらに親権を持たせるのが子どもの幸せにとって良いかということです。その判断の際に考慮される事由は、おおむね以下のようなものになります。
① 子どもに対する愛情
 相手より愛情が多いと判断してもらえると有利ですが、これは今までの養育状況や客観的事情から推測されることになります。
② 子どもの年齢
 子どもの年齢が低いほど、母親と暮らす方が適当と判断されやすいといえます。子どもの年齢が10歳以上である場合は、子どもの意思も必要に応じて親権者選定のための判断要素として考慮され、15歳以上になると基本的に本人の意思が尊重されます。
③ 子どもと過ごす時間
 子どもと過ごす時間が長く取れる方が有利ですが、一般的に男性は労働時間が長かったり、出張、転勤が多いことから、不利といえます。
④ 経済力
 経済力はある方が望ましいですが、一般的に収入が多い父親を親権者にしなくても、養育費を負担させることで解決できますので、決定的な要素とはなりません。
⑤ 心身の健康
 子どもの養育を十分に遂行するには心身の健康も重要な要素となります。
⑥ 子どもとの同居の状況
 離婚に至る夫婦の多くは、既に別居をしているケースが多いですが、母親の方が出て行って父親が子どもと一緒に住んでいるということなどは父親に有利な事情といえます。
⑦ 生育環境
 親権を得るためには、相手方よりも子どもが健やかに育つための条件が揃っているといえると有利になります。父親からみた場合でいうと、父親の両親が同居しており、子どもの面倒を見てもらえる環境が整っている、父親の収入が高く、母親よりも明らかに子どもの健やかな発育のための環境が作れる、父親が日頃子どもとの時間を作っていた、保育園の送り迎えをしていた等の事情が考えられます。裁判所に考慮の対象としてもらうには、日記やメモなどをつけておいて裁判の際に提出するのがよいでしょう。
 一方、母親が親権者確定前に子どもを意図的に連れ去って父親に会わせないようにしたり、母親の収入が極端に少ない、母親に借金がある、仕事時間が長い、生活習慣が良くないなど、子どもの健やかな発育のための環境が作れないと判断される事情があることは父親に有利に働くといえます。なお、親権は、子どもの幸せのためという観点から、今後どちらが親権者となった方がいいかということが決められるため、離婚原因と親権の問題は別々に扱われます。したがって、仮に不貞行為を行った配偶者であっても親権者となることがただちには否定されません。

4 養育費
 離婚にあたっては、子どもの養育費を定めるのが通常です。養育費については、父親と母親の年収によって相場が決まっており、裁判所のホームページで公開されていますので、これを参照して下さい。なお、養育費の支払義務は、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を扶養を受ける者にも保持させる義務とされていますので、養育費は余裕がある場合に支払えばよいというものではなく、親の生活水準が落ちることがあっても支払わなければならないということになります。養育費を支払うことが将来の子どもとの信頼関係構築につながるといった側面もありますので、養育費はきちんと支払うのがよいでしょう。

5 面会交流について
 父親の場合、結果として親権を得られない場合が比較的多くなりますが、そのような場合でも、子どもの心身の安定と、将来、親権者変更の機会を確保しておくためにも、面会交流権は確保し、定期的に会っておくべきです。きちんと面会交流していないと、子どもに対する愛情や、生育に対する配慮・関心がないとして、将来、親権者の変更を申立てても認められないことともなりかねません。
 なお、面会交流と養育費は法的には別ですが、実際には養育費を払わない親には子どもを会わせたくないとして子どもに会わせないケースが多いですから、やはり養育費はしっかり支払うのがいいでしょう。

6 親権者の変更
 離婚する際に決めた親権者の変更には、家庭裁判所の調停・審判を経なければならないとされていますので、離婚後に親権者を変更するには、親権者変更の調停の申立が必要です。
 親権者変更の調停では、大まかな流れは離婚調停の場合と変わりませんが、離婚調停と異なる点は、子どもの福祉を判断するための調査が改めて行われることです。
この調査は、家庭裁判所調査官が裁判所の命令を受けて行なわれますが、この調査では親と会う以外に、子どもとの面会・家庭訪問・学校訪問などで、離婚後の子どもの心境や環境に配慮し、離婚後の子どもの生活環境や親子環境を慎重に判断した上で決定されます。
 調停が残念ながら不成立となった場合、審判手続へ移行することが可能ですが、調停や審判を経て変更される親権者の変更は、裁判所が考慮する事情が離婚時と異なります。
子どもの利益や福祉が第一であることは変わりませんが、離婚時に親権が定められた経緯があるため、わざわざ親権を取り上げてもう一方に変更する必要があるのかどうかということが重視されます。現状は、あえて変更すべき相当な理由がない限りは親権の変更が認められるケースはあまり多くはなく、かなり難しいといえます。

7 親権者変更において考慮される事情
 親権の変更が認められるのは、子どもの利益や福祉を考え、子どもに必要だと判断される場合のみです。家庭裁判所調査官の調査を踏まえ、主に以下のような事情を総合的に考慮して判断されると考えられます。
① 養育環境の悪化
・親権者の長期入院や、病気により、子どもの世話が難しくなった
・子どもへの暴力や虐待がある
・育児放棄や親権者が子どもを置いて行方不明になった
・親権者がギャンブルに明け暮れ子どもの世話を放棄した
・子どもに強制労働させた
・同居する再婚相手との関係が極めて悪い
② 養育環境の変化
・親権者が海外や遠方に転勤することになった
・学区の変更によって情緒の安定を欠くようになった
③ 子どもが親権者変更を希望している
子どもが15歳以上であればその意志が尊重されます。

8 親権者の変更を得るために
 親権者の変更を得るためには、裁判所が考慮する以上の基準を知っておく必要があります。調停を申し立てる際には、親権者として子どもに最適な養育環境を提供できると疎明できるように準備しておきましょう。家庭裁判所調査官による家庭訪問、学校訪問、親や子どもへの意見聴取などによる調査もありますので、家庭裁判所調査官の調査が有利なものとなるよう、事前にしっかり準備しておくことも大事です。
 また、調停は話し合いの場ではありますが、証拠を踏まえて親権を変更すべき事情を主張し、調停委員に理解してもらうことが重要です。その場合、信頼できそうな人物と思ってもらい、調停委員を味方につけることも大事ですから、印象が良いに越したことはありません。
 弁護士は、法律の専門家ですから、専門知識をもとに以上に述べたことを踏まえて対応してくれます。そのため、有利な結果に導いてくれる可能性が高くなりますし、心強い味方となって自ら行うときより精神的な消耗を減らすことができます。是非、弁護士にご相談することをお勧めします。

                                                     以上

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