弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

養育費が請求できる範囲や時期について

2018年10月31日 離婚

1 はじめに

 離婚が成立しても,約束していた養育費が支払われない,また,そもそも養育費の取り決めをしていなかったということが多々あります。こうした場合,改めて相手に養育費を請求したり,差押えを検討する必要がありますが,養育費について,取り決めがあったか否かによって,実際に請求できる範囲に違いが出てきます。また,養育費も長期間請求をしないと,時効にかかることがあります。

 今回のコラムでは,養育費の請求可能な範囲や時効について説明をします。

2 養育費を請求できる範囲について

 養育費の請求できる範囲は,離婚の際に養育費に関する取り決めをしていたか否かによって変わってきます。

 養育費の取り決めをしていた場合,いつ,いくらを支払うのか,具体的に定まっていますので,支払い時期が到来した分については,いずれも請求をすることができます。

 これに対し,養育費の取り決めをしていなかった場合,具体的な請求時に当たる,調停や審判の申立て時とされることが実務上は多いです(神戸家審平成元年1114日家月42394頁)。これは,過去の期間の分等を突然,一括請求されてしまうと,支払い義務者に予想外の大きな負担が生じることになりかねないため,こうした支払い義務者への不意打ちを防ごうという考え等に基づく運用です。そのため,養育費の取り決めをしていなかった期間の分については,合意等が成立しなければ,そもそも支払ってもらえないことがありますので,注意が必要です。

3 養育費の時効は何年か

 養育費の請求ができる場合でも,時間が経ってしまうと,時効によって請求ができなくなる部分が出てきます。そこで,養育費の時効が具体的にはどれくらいかが問題となってきますが,これは養育費の取り決めの仕方によって違いが出てきます。

 裁判手続きを経ずに養育費が決まった場合(裁判所外での交渉や協議書で決まった場合や公正証書で取り決めた場合等がこれに当たります。),時効は,支払い時期が到来したときから5年となります(民法169条参照)。養育費の支払いは,毎月一定額を支払うという定期的な支払いをするものですが,こうした1年より短い期間を定めた定期給付の債権は,民法上,5年で時効を迎えるとされています。これは,短期間で支払いがなされる債権については,長期間にわたって未払いの状態で放置されることは少なく,むしろ,請求根拠となる資料も,長期間の保存を期待できないため,時効の期間を短くしてよいという考え方に基づくものです。

 これに対して,裁判所の手続きを利用して養育費が決まった場合(判決や調停,審判,裁判所での和解で決まった場合等がこれに当たります。),時効は,支払い時期が到来したときから10年となります(民法174条の2参照)。これは,債権の存在が公に確定された以上,もはや請求根拠となる資料が残っているかを心配する必要も乏しいため,時効の期間を短くする必要はないとの考えに基づくものです。

4 まとめ

 以上のとおり,養育費については,いつから請求をしたのか,どのような手段で取り決めたかによって,請求できる範囲や時効に差が出てきますので,請求や取り決めは慎重に行う必要があります。また,時効の期間が短かったとしても,時効が途中で中断している場合等,なお請求ができることもあります。

 養育費の請求や取り決め等でお困りごとがあれば,お気軽に弁護士にご相談ください。

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